大阪大学事例

大阪大学 大学院工学研究科

教授 林 高弘 様 インタビュー

福島第一原子力発電所の廃炉をはじめ、近年では「高線量」「視界不良」といった人が容易に近づけない環境下での計測技術が求められています。
その中で、カメラに代わる空間認識技術として注目されているのが超音波フェーズドアレイ(PA)技術です。

今回は、超音波計測・非破壊計測・ガイド波を専門とされる、林 高弘 様に、研究内容や弊社TPAC装置の活用についてお話を伺いました。


大阪大学大学院工学研究科 林高弘教授

ご経歴

  • 2019年5月 – 現在
    大阪大学 大学院工学研究科 教授
  • 2012年5月 – 2019年4月
    京都大学 大学院工学研究科 准教授
  • 2009年2月 – 2012年4月
    豊田中央研究所 研究員
  • 2000年4月 – 2009年1月
    名古屋工業大学 大学院工学研究科 機械工学専攻 教員(助手・助教)
  • 2002年1月 – 2002年12月
    ペンシルベニア州立大学
  • 1997年 – 2000年
    工業技術院 資源環境技術総合研究所 研究員

専門分野は、超音波、超音波計測、非破壊計測、ガイド波です。


高線量・視界不良環境に挑む超音波可視化技術

林教授の研究テーマの一つが、「高線量かつ視界不良環境における内部環境の可視化」です。

福島第一原子力発電所の廃炉では、放射線量が高く、カメラでは視界を確保できない環境が存在します。そうした状況下でも周囲の状況を把握するため、超音波フェーズドアレイ技術を用いた空間認識技術の研究に取り組まれています。

「視界不良・高線量下での空間認識技術として、超音波フェーズドアレイに可能性を感じました。カメラの代替となる新しいアプローチです。」

研究のきっかけとなったのは、CLADS(廃炉国際共同研究センター)が推進する超音波可視化プロジェクトへの参加でした。
廃炉という社会課題の解決に貢献できる研究であることに大きな意義を感じられたといいます。

引用元:視界不良・高線量下での空間認識のための超音波可視化技術

高線量・視界不良環境における超音波フェーズドアレイ技術の研究

フェーズドアレイUTへの認識を変えたTPAC装置

「以前からフェーズドアレイUTの存在自体は知っていましたが、当初はそこまで魅力を感じていたわけではありませんでした。」しかし、2022年以降、実際に装置を導入して研究を進める中で、その可能性への認識が大きく変わったそうです。

「実際にいろいろ試してみるうちに面白さに魅了されました。今では、フェーズドアレイ装置がなければ実現できない研究課題もあると感じています。」

TPAC装置を知ったきっかけは、小原 良和 教授(現 東北大学 大学院工学研究科 材料システム工学専攻)からの紹介だったとのことです。「研究開発用途として非常に使いやすいコンセプトだと感じました。自由度が高く、いろいろな使い方ができる点が魅力です。」


多チャンネル同時受信が広げる研究の可能性

林教授は、TPAC装置の特長として“FMC(Full Matrix Capture)各チャンネルのAスキャンを一度にすべて受信できること”を挙げます。

複数チャンネルで同時に波形を受信・解析することで、従来よりも高度な可視化や評価が可能になります。

「受信だけに使うなど、一般的な探傷とは異なる使い方もできる。研究用途として非常に面白い装置です。」

柔軟性の高さは、新しい計測手法の検討や実験系の構築において大きなメリットになっているとのことでした。

研究用途で活用される超音波探傷装置 Pioneer

“波形が絵になる”ことが教育にもつながる

学生教育の面でも、超音波フェーズドアレイ技術は大きな効果を発揮しています。

「解析結果が“絵”として見えるのが非常に面白いです。欠陥の位置や状態が可視化されることで、学生も理解しやすくなります。」

また、一般的な市販センサーでは位相情報を綺麗に取得できないケースもある一方で、探傷器ベースのシステムでは波形品質や信頼性が高く、研究・教育の両面で有効だと評価されています。

取得した波形データを後から解析・補正できる点も、学生が超音波伝搬や信号処理を学ぶ上で重要なポイントになっているそうです。


今後への期待

TPAC社装置について、今後期待する点として「より豊富なサンプルコード」や「マニュアルの充実」を挙げられました。「装置を最大限活用したいので、研究用途を意識した実装例や活用事例がさらに増えるとありがたいですね。」

最後に、弊社へのメッセージとして次のようなお言葉をいただきました。「会社が大きくなっても、研究開発向けの柔軟なカスタマイズ対応はぜひ続けてほしいです。」


インタビューを終えて

林教授の研究は、超音波技術を単なる“探傷”に留めず、過酷環境における空間認識や可視化へと発展させる挑戦でもあります。
研究用途ならではの柔軟な発想と、実験・教育の双方での活用事例は、私たちにとっても大変刺激的なものでした。

今後もユーザーの皆様の声を取り入れながら、研究開発を支援する装置・技術の提供を進めてまいります。

林教授、この度は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。


[インタビュアー:dB春田]