アダプティブTFMとは?
プローブを直接接触させる超音波探傷試験では、探傷面が平滑でない場合にプローブの倣い性が悪くなるという課題があります。
また、従来のTFMでは、検査面形状の変化によって超音波の伝搬経路が変化し、イメージ品質が低下する場合があります。

ATFMでは、アレイプローブから検査面までの距離を測定し、測定された距離を基に検査面の形状推定を行い、推定した表面形状を用いて超音波の伝搬経路および屈折を補正し、TFM演算に取り入れることで探傷画像を得ます。このプロセスを以下に示します。

以下の結果は、波打った表面形状を持つ試験体に対し、通常のTFMで解析した場合と、ATFMを適用した結果の例です。ATFMを用いることで表面形状が適切に補正され、きず指示が明瞭に描写されていることが分かります。

アダプティブTFMを用いることで、溶接余盛の上や曲面などの複雑な表面形状といった、これまで直接プローブを当てることが難しかった箇所に対しても探傷が可能となります。
ウェッジについて
直接接触の場合、ATFMでは表面形状に倣うため、水を充填したフレキシブルウェッジもしくは疎水性ゲルカプラ(ゲルウェッジ)を用います。


水浸探傷によるアダプティブTFM
水浸探傷においても、もちろんATFMは使用可能です。水浸探傷では通常X-Yスキャナやロボットを用いてプローブをスキャンしますが、機械的な位置精度や対象物の影響で、プローブと対象物との水中の距離(水距離)が変化します。通常のTFMのアルゴリズムでは、プローブと試験体の位置関係は固定のため、水距離が変化するとTFMの画像にも悪影響を及ぼします。以下は、水距離を基準から±12 mm変化させたときの鋼中φ0.8 mm FBH(平底穴)のイメージング結果です。通常のTFMでは、きず指示が不明瞭になっているのに対し、ATFMでは明瞭に表示されています。アダプティブTFMを使うことで、水距離の変化に対してもロバストになります。



アダプティブPWI
アダプティブの技術はPWI(Plane Wave Imaging)にも適用可能です。PWIにおいても、アダプティブによる表面推定処理は概ね同等の性能が得られます。PWIを用いることで、以下のメリットが期待できます。
• 高感度化
• 検査速度の向上
一方で、底面エコーの形状検出についてはATFMの方が良い結果が得られる傾向があります。
ATFM ( PWI ) × コヒーレンスイメージング
TPACのアダプティブTFMは非線形ビームフォーマであるコヒーレンスイメージングと組合せることも可能です。コヒーレンスベースのビームフォーマは通常の遅延和 ( DAS )演算に比べ、ノイズの多い粗粒材に対するSN比の向上に期待できる他、アダプティブTFMにおいては表面付近の形状起因のアーティファクトの除去にも効果があるため、表面近傍分解能の改善にも効果的です。以下の例は非線形ビームフォーマの一種であるECI ( Enhanced Contrast Imaging )によるものです。表面近傍のノイズが低減され、表面直下のきず指示とのコントラストが向上しています。

TPACのソフトウェアではこのような複雑な処理もリアルタイムで表示することが可能です。以下に参考動画を示します。
Prelude ― 溶接検査および研究開発向けの高機能データ取得・解析ソフトウェア
Preludeは、溶接検査や研究開発に対応したデータ取得・解析ソフトウェアです。超音波検査データを効率よく収集し、可視化・解析することで、欠陥の検出や評価を支援します。溶接部の品質確認、NDT検査、研究用途において、検査精度と作業効率の向上に役立つツールとして紹介されています。