任意波形発生器(AWG)

通常の超音波探傷装置では、スクエアパルスやスパイクパルスといった広帯域信号を発生させ、超音波プローブを駆動します。
一方、任意波形発生器(AWG : Arbitrary Waveform Generator)は、バースト信号やチャープ信号など、任意に設計した波形で超音波プローブを駆動することが可能です。これにより、用途に応じた送信波形の最適化や、S/N向上、周波数特性評価などを行うことができます。

任意波形発生器 AWGによる超音波プローブ駆動のイメージ

また、チャープ信号のような長時間の送信波形を使用する場合には、受信側でマッチドフィルタ処理を適用することで、送信エネルギーを維持したまま時間方向に圧縮することができます。これにより、高い時間分解能を維持しつつ、S/N比を向上させることが可能となります。

マッチドフィルタは、送信信号 に対して以下のように定義されます。

h(t)=s(Tt)h(t)=s^* (T-t)

ここで、
・h(t):マッチドフィルタ 
・s(t):送信信号 
・s* (t):送信信号の複素共役 
・T:信号長 
を表します。
受信信号 r(t)に対してこのフィルタとの畳み込み演算を行うことで、

y(t)=r(t)h(t)y(t)=r(t)*h(t)

送信したチャープ波やバースト波のエネルギーを時間方向に圧縮し、高いS/N比と時間分解能を両立することができます。

空中超音波探傷では、空気と試験材料との音響インピーダンス差が非常に大きいため、超音波が材料内部へ透過するエネルギーはわずかとなります。そのため、実用上は非常に高い送受信感度が要求されます。

TPAC の PILOT +では、シングルプローブに対して任意波形を用いた駆動が可能です。
これにより、空中超音波探傷においてバースト波やチャープ波などの長時間励振信号を使用し、送信エネルギーを増加させることで、透過信号の低下を補うことができます。

さらに、TPAC では空中超音波用途向けに高感度プリアンプも用意しており、微弱な受信信号を低ノイズで増幅することで、空中超音波探傷における受信感度向上に寄与します。

空中超音波探傷検査(Air Coupled Ultrasonic Testing)のメリットとは?

空中超音波探傷検査(ACUT)は、水やジェルなどの接触媒質を使用せず、センサーを対象物から離した状態で検査できる非接触型の超音波検査技術です。複合材やハニカム構造材、接着部品などの検査に適しており、検査速度の向上や製品への負荷軽減が可能です。製造工程への組み込みもしやすく、高効率な品質管理を実現します。

TPAC のフェーズドアレイ・FMC/TFM超音波探傷装置 Pioneer では、フェーズドアレイプローブの各素子を任意波形で個別に駆動することが可能です。

これにより、従来の短パルス励振だけでなく、バースト波やチャープ波を用いた高度な送信制御をフェーズドアレイ探傷へ適用できます。
さらに、FMC(Full Matrix Capture)データに対してマッチドフィルタ処理を適用することで、TFM(Total Focusing Method)イメージングにおける感度向上や、低S/N環境での欠陥検出性能向上が期待できます。

任意波形発生器(AWG)をフェーズドアレイ・FMC/TFM超音波探傷に適用したイメージ

このような技術は、空中超音波探傷、高減衰材料、複合材料検査など、従来の短パルス励振では十分な感度確保が難しいアプリケーションに有効です。