フェーズドアレイ超音波探傷の原理
従来の超音波探傷(コンベンショナルUT)は、単一の振動子をもつプローブを用いて、材料内部のきず(欠陥)を検出する技術です。
超音波を材料内部へ送信し、欠陥や底面から反射して帰ってくるエコーを時間軸上で表示することで、内部状態を評価します。この表示方式は「Aスキャン」と呼ばれ、エコー高さ、到達時間から結果の有無や深さを判断します。
しかし、Aスキャンではプローブ直下の1ライン情報しか取得できず、欠陥形状や位置関係を直感的に把握することが困難でした。 そのため、広範囲を評価するには、プローブを機械的に走査しながら多数のデータを取得する必要があり、検査能率や再現性に課題がありました。

フェーズドアレイ超音波探傷(PAUT:Phased Array Ultrasonic Testing)は、複数の振動子を配列した「アレイプローブ」を用いる超音波技術です。
各振動子の送受信タイミングを制御することで、超音波ビームを電子的に制御できます。この遅延制御により、超音波波面が合成され、ビーム角度変更(Steering)、フォーカス制御(Focusing)、電子走査(Electronic Scanning)が可能となります。
例えば、
素子を同時送信 → 垂直ビーム、遅延を段階的に付与 → 斜角ビーム、中央基準で遅延制御→ 集束ビーム
のように、電子で気に超音波の伝搬方向や焦点位置を制御できます。
また、振動子グループを高速に切り替えることで、機械的な走査を行わずにビーム位置や角度を移動できます。代表的な方法として、ビーム位置を横方向へ移動する「リニア」走査、ビーム角度を連続的に変化させる「セクタ」走査があります。
これにより、断面画像(Bスキャン)として内部状態を可視化でき、従来UTよりも高速かつ高効率な探傷が可能となります。


PAUTでは、あらかじめ設定した条件に基づいて超音波ビームを形成します。そのため、フォーカス位置が限定される、深さによって分解能が変化する、ビーム条件に画質が依存する、といった制約があります。そのため,特に微小欠陥評価や複雑形状部では、より高分解能なイメージングが求められるようになりました。
こうした背景から発展したのが、FMC(Full Matrix Capture)及びTFM(Total Focusing Method)です。